音楽アーティストと作曲者のはざまで起こる突然変異
演奏と作曲は共通点がありながら全く異なる作業です。メロディーラインやアレンジは作曲者の意図に関わらず、演奏者によって様々な表情へと変貌していきます。音楽アーティストには作る人と演奏する人に分かれます。両方できる人もいますが、どちらかに比重を置く方がアーティストとしての命は長いようです。
演奏に集中できれば一音一音の出音に神経をとがらせることができ、曲の表情も豊かになっていきます。楽曲の中のインプロビゼーションはメロディーをカラフルに彩ることができます。無駄なアドリブではなくて効果的なオブリガートは、メロディーの合間を縫うように展開をスリリングにします。音楽アーティストも一部のギタリストは演奏に固執して作曲することがありません。本来の意味の作曲でいうならば、ほとんどのボーカリストがメロディーを作り上げる最中にギタリストのコード進行にインスピレーションを得ています。
名曲の多くはコード進行に秘密を持っていません。非常にシンプルなコード進行でボーカリストはソウルフルに歌い上げることができます。ギターのコードバッキングは厚みがあればヘビーになり、アルペジオの中でメロディーをきらびやかに演出することができます。ロックバンドの多くが短命だったり同じメンバーで長く続けることができないのは、オリジナリティを追求するあまりに目的を見失ってしまうからです。優れたバンドでもデビュー当初と解散前では、円熟味を増していくにつれてバンドとしての個性も面白みも消えていきます。
演奏にそつがなければ無難に聴こえますが、各メンバー間での火花が散るようなバトルも即興も楽しむことはできません。演奏されるほとんどの曲の主導権は作曲者にありますが、バンドに限って言えることは楽曲の主導権は演奏者にあります。作曲者の意図に関係なく楽曲は変化していきライブの会場で演奏は変化していきます。数多く演奏された中で、突然変異的に優れた名演が生まれることは歴史が証明するところです。
0コメント