音楽アーティストが持つ本能的な音の嗅覚

音楽アーティストの多くは音符を読んだり書いたりしない。決められたコード進行は曲の骨組みであり色付けはアーティストが行う。構成の原理を極めれば曲はジャムセッションから生まれ、骨組みに様々な肉付けが施されていく。


アーティストとはいっても音楽の場合は演奏することでしか自己主張ができないために、口数が少ない人が多いのは事実である。音楽アーティストは孤高の存在であること以上に、常に新しいものを求める。現状維持に安寧を求めている人は少ないといっていい。

頼れるヒット曲のある人はいいが、アーティスト本人はいつまでも若いわけではないので、若いころのように演奏することは難しい。歌わない音楽アーティストの多くは楽器を声のように歌わせることができる。ギタリストであればビブラートなどのテクニックに特徴を持たせることが個性につながる。


速く弾ければインパクトはあるが、ビブラートなどのフィンガーテクニックを身に着けていなければ絶対に行き詰ることになる。速く弾ける人への評価はそれなりでも、シンプルなテクニックを身に着けてそこに個性をエッセンスとして注ぎ込めるなら、まさにそれこそ超人的技巧ということになる。結局楽器は声を再現することにあるのだから、それぞれのテクニックは連携して使われることが望ましくなる。


ロングトーンを駆使するならハウリングのような単に音をのばすだけでなく、その音に皇帝をつけたコントロールが必要になる。優れたアーティストには直感でそのコントロールに絶妙な倍音を加えることができる。エレキギターやエレキベースのフィンガーテクニックは、絶対にコンピュータに置き換えることができない人間の感情が左右する部分である。

コンピューターの音の強弱であるベロシティと、フィンガーテクニックの強弱は似て非なるものであって、絶対に再現することはできない。そして音楽アーティストの究極的な演奏テクニックは、さらに誰にも真似することができないのである。